【お知らせ】関連リンク集を更新しました(2019.03.08)

【ニュース】「ナノピア®LRG」CRPを超える炎症マーカーで変わるIBD診療

内容

以前に炎症性腸疾患の活動期に使えるの判定に使える「ナノピア®LRG」の承認取得について紹介しました。

【ニュース】積水メディカル 炎症性腸疾患の診断補助薬「ナノピア®LRG」承認取得

今回はそれに関する続報です。
ナノピア®LRGのメリットが詳しく解説された記事を紹介します。


日経メディカル(2108/11/15)

ナノピア®LRGの概要

  • 積水メディカルは2018年8月、炎症性腸疾患(IBD)の病態把握を補助する「ナノピア®LRG」の製造販売承認を取得。
  • 「ナノピアLRG」は、炎症部位から産生されるロイシンリッチα2グリコプロテイン(LRG)という蛋白の血清中濃度を測定する体外診断用医薬品。汎用の生化学自動分析装置が院内にあれば、患者の血液から約10分間で検査結果を得られるため、診療当日に検査結果に応じた治療方針を立てられるのが特徴。
  • IBDの疾患活動性を血液検査で評価できる診断薬は世界初。6カ月~1年後の保険収載を目指す。

CRPが上がらない再燃症例も判別

  • 再燃、寛解を繰り返すIBDでは、できるだけ長く寛解状態を維持しつつ、再燃の兆候が認められた段階で薬剤の調整を行い、炎症が重度化する前に素早く寛解状態に戻すことが重要になる。近年、抗体医薬などの登場で治療成積が向上し、患者の自覚症状がなくなる「臨床的寛解」だけでなく、内視鏡的に炎症がほぼ認められない「粘膜治癒」(mucosal healing)まで達成できる症例が増えてきた。臨床的寛解よりも粘膜治癒を維持した方が再燃のリスクが低いことも分かっており、粘膜治癒こそがIBD治療の目標になっている。
  • 従来、患者が粘膜治癒に至っているかどうかを確実に判定するには、大腸内視鏡検査を行って直接確認するしかなかった。大腸内視鏡検査は専門的な設備を有した医療機関でしか行えない上、侵襲性が高く、検査自体が疾患の増悪リスクになるため、頻回に実施できないという課題がある。
  • 2017年には疾患活動性を評価する侵襲性のない検査方法として、再燃時に腸管上皮の好中球が放出するカルプロテクチンをELISA法や蛍光酵素免疫測定法で測定する「便中カルプロテクチン検査」が保険適用された。ただ、この検査はあまり普及していない。その理由は、検査結果が出るまでのタイムラグにある(結果が出るまでに3日~2週間)。
  • 便中カルプロテクチン検査は陰性的中率が高いため「粘膜治癒を維持できている」という確認には向いているものの、再燃した際に早期発見できるほど検査体制が整っていないのが現状。
  • 実際の臨床現場では、患者の症状の訴えに加えて、白血球数や赤血球沈降速度(ESR)、C反応性蛋白(CRP)などの血液データを参考にする所が多い。ただ炎症マーカーであるCRPは、インターロイキン(IL)-6依存的に肝臓で産生され、その他の炎症性サイトカインで起こる炎症では発現が誘導されない。
  • その点、LRGはTNFα、IL-22といったIL-6以外のサイトカインで引き起こされる炎症でも発現する。潰瘍性大腸炎の患者を対象にした臨床研究では、LRGが大腸内視鏡検査による疾患活動性の評価と有意に相関していることが明らかになった。さらに、一般的に正常だと判断されるCRPが0.2mg/dL以下の患者グループでも、粘膜治癒が維持できている人とそうでない人で有意差があり、1人の患者でLRGの変化を追うことで疾患活動性を評価できることが示唆されている。つまり、これまで血液検査では再燃していることが分からなかった患者でも、再燃を判断できる。クローン病でも同様に、疾患活動性を評価できることが分かっている。
潰瘍性大腸炎の患者を対象にしたLRG値と大腸内視鏡所見との関連性

早めの薬剤変更で再燃を早期に抑える

  • 受診当日に簡単にIBDの疾患活動性を推測できることが特徴のバイオマーカーLRG。これにより診療はどう変わるのか?
  • 【診断の場面】
    LRGの値が高ければ非炎症性疾患である過敏性腸症候群(IBS)を除外できる。ただし炎症を伴う感染性腸炎との鑑別はできない。早期にIBDの診断を下すことができれば、早めに治療を開始できる。
  • 【治療効果の判定】
    新薬が続々登場していることもあり、IBDの治療薬の選択肢は幅広い。薬が患者に合っているかどうかを迅速に判断できれば、無駄な投薬を省いたり寛解導入療法を行う期間を短くできる。
  • 粘膜治癒にまで至り、寛解導入療法から寛解維持療法に切り替えるタイミングでLRGを測定すれば、その患者の寛解時のLRG値を把握できる。寛解維持中の経過観察の際にLRG値が上昇すれば、再燃の兆しがあることが患者とも共有できるため、薬剤調整を早めに行ったり、生活指導につなげやすい。
  • LRG検査によって炎症がひどくなる前に治療できれば、再燃の確認と治療評価の場面で行う大腸内視鏡検査を結果的に減らすことも可能。
  • LRG検査は大腸内視鏡検査を完全に代替するものではなく、診断時に行う炎症範囲の評価や、寛解導入療法に移る際の粘膜治癒に至ったことの確認、寛解維持中に1~2年に1回行う大腸癌のサーベイランスなどの場面では、大腸内視鏡検査を行う必要がある。
  • LRGはそもそも、関節リウマチ患者の疾患活動性のマーカーとして血清のプロテオーム解析で発見された物質。関節リウマチ患者にIL-6を抑制する抗体医薬を投与した場合、治療効果にかかわらずIL-6依存のCRP値が下がるため、疾患活動性の評価が難しい。この課題を解決する目的で、様々な原因で引き起こされる炎症によって一様に発現するLRGが同定された。

所感

承認取得時のニュースで期待したいと書いた点(下記)がそのまま実現しそうで素晴らしいですね。

炎症マーカーとしておなじみのCRPも、活動性の“徴候”の指標には人によってなったりならなかったりする(軽症~中等症ではCRPがあまり上昇しないことも多い)ので、もっと便利で活動性を良く反映する指標として活躍してもらえるようになることに期待します。

治療薬だけでなく、このような診断補助薬の進歩も患者、医療従事者双方に大きなメリットがありそうですが、実際の臨床現場で導入された際にどうなるのか、引き続き関連ニュースをウォッチしたいと思います。

おわり。

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