こんにちわ。
先日、試験中のトイレ退室問題について一部で話題になりました。
IBD(潰瘍性大腸炎、クローン病)に関連が深いことなので経緯を含めて内容をまとめます。
日商簿記の試験中「トイレで一時退室」で不合格
発端の出来事は、下記の通りです。
試験中に、トイレのために一時退室できないのは不合理だ――。日商簿記1級の検定試験で途中退室し、結果が不合格となった都内の男性がこう主張し、試験を実施した東京商工会議所に受験料の賠償や慰謝料を求める訴訟を起こした。しかし、東京地裁(篠原敦裁判官)は「どんなルールを定めるかは実施者の裁量」として請求を退けた。
10日にあった判決によると、簿記試験は開始から30分以内の退室や、それ以降に退室した場合の再入室を規則で禁止している。2017年11月に1級検定を受けた男性は、開始15分後からトイレを我慢し、30分を過ぎた後に行ったため、再入室できずに帰宅。結果は不合格だった。
訴訟で男性は「完全にコントロールできない生理現象に配慮する義務が東商にはある」と訴えた。東商は、「退室を認めると、携帯電話を使ったカンニングにつながる恐れがある」などと、ルールの正当性を主張していた。
判決は「トイレが原因で、実力を発揮できない受験者が出る可能性はある」とする一方、「カンニングを完全に排除できない」という東商の主張を認めた。試験自体は1コマ90分で、15分の事前説明を含めた着席時間は105分間。判決は「過剰な水分摂取を控えれば、トイレに行かずに済む場合が多い」とも指摘した。
日商簿記は年間約55万人が受験する。1級は最難関で、公認会計士や税理士への登竜門といわれる。
試験中、トイレで退室 認める?認めない?司法判断は… | 朝日新聞デジタル 2019.01.17
高橋メアリージュンさんの呼びかけ
この問題を受けて、女優・モデルの高橋メアリージュンさんがTwitterにて下記のように呼びかけを行いました。
(2019年1月27日14時)
試験中のトイレ問題。潰瘍性大腸炎やクローン病の人からしたら、試験前にトイレ済ませてもどんなにコンディション気をつけてても行きたくなる時はなる。人の「トイレに行きたいです」や、「お腹が弱い」は笑えないです。#潰瘍性大腸炎#クローン病
— Maryjun_Takahashi (@Mjtaka1108) 2019年1月27日
ご存知の方もおられるでしょうが、高橋メアリージュンさんご本人も潰瘍性大腸炎を患っておられることを公表されています。
なるべく言わないでおこうと思っていたのですが、異常に化粧室に行く頻度が多かったり、皆様にハッキリとしないままご心配をおかけしてしまっているのでご報告させて頂きます。先日、潰瘍性大腸炎と診断されました。少しでも早く治せるよう努めます。皆様ご理解の程よろしくお願い致しますm(__)m
— Maryjun_Takahashi (@Mjtaka1108) 2013年11月7日
このツイートが話題になり各種メディアで取り上げられています。
参考①:
高橋メアリージュン、試験中のトイレ退室問題に理解呼びかけ反響 …
しらべぇ(2019年1月30日)
参考②:
高橋メアリージュン、「試験中のトイレ問題」に言及
日刊スポーツ(2019年1月29日)
フジテレビ『ワイドナショー』での取り上げられ方
2019年1月27日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ | 毎週日曜 10:00-11:15)にて、先述の日商簿記試験中のトイレで一時退室での不合格の問題が取り上げられています。
時間からみて高橋メアリージュンさんのツイートもおそらく、この放送を見てのものだと思います。
この日の出演者は、以下の通り。
※該当の内容が放送されたタイミング
【MC】
東野幸治
佐々木恭子(フジテレビアナウンサー)
【コメンテーター】
松本人志(ダウンタウン)
【その他コメンテーター】
犬塚浩(弁護士)
井頭愛海(現役高校生)
【ゲスト】
いとう あさこ(お笑い芸人)
トラウデン直美(モデル、タレント)
石原良純(俳優、タレント)
(敬称略)
出演者のコメント
該当の問題についての出演者のコメントをまとめます。
【番組でのニュース内容紹介】
佐々木恭子:直美さん今、試験中ですもんね。
気になりますか?このニュース。
トラウデン直美:そうですね。ちょうどタイムリーに私も試験中だったんで、このニュースが気になったんですけど。
今回の事件に関しては仕方がないと思うんです。ルールも決まってたし。
東野幸治:なるほど。これは納得してるの?
トラウデン直美:これには納得してるんです。
でも、トイレに行くって生理現象じゃないですか?
なんで、仕方がないかなぁって思うんですね、基本的には。
佐々木恭子:もうちょっと許してあげて欲しい?
トラウデン直美:はい。もうちょっと許してもいいんじゃないかなと思うんです。
松本人志:気になりだしたら、また行きたくなるしね。
トラウデン直美:ただ、トイレに行っちゃダメって決まりってカンニング防止じゃないですか?
そもそもカンニングを皆がしなければいい話だと思いませんか?
松本人志:そうそう。
トラウデン直美:カンニングをしないで欲しいっていうのが私の意見です。
松本人志:えええ(笑)答え出た。
東野幸治:子供みたいな結論や(笑)
いとうあさこ:「じゃあみんなでカンニングやめようっ!絶対やめようね!」
東野幸治:カンニングする人がおると思って(対策を)やったほうがいいじゃなですか。
(カンニングを)しないように、したらちゃんと捕まるように。
トラウデン直美:携帯電話でいくらでも調べたられる時代になっちゃってるじゃないですか。
(中略)
松本人志:携帯取り上げらたアカンわけ?試験前に。
トラウデン直美:そう、そこなんですよね。
だから携帯取り上げらたいいのになって思うけど、面倒くさいとか。
松本人志:携帯一個とも限らんもんね。
東野幸治:隠し持ってるっていうのもあるから。
だから一緒に先生が出ていくっいうのもあるんでしょ?
佐々木恭子:そうなんです。
センター試験なんかは試験中に挙手をすれば、監督者の付き添いでトレイに行くことが出来て、再入室も認められてはいるんですね。
松本人志:一番簡単な方法は紙おむつでしょうね。
東野幸治:事前に自信ないやつは紙おむつ履いてやるってことですか(笑)?
(中略)
トラウデン直美:例えばコンテストとかで、自分の順番のときにお腹が痛くなっちゃって後に遅らせてもらうってたぶん出来ないじゃないですか。
その生理現象に対する寛容さがもうちょっとあってもいいのかなって。
東野幸治:もう少し自分で、事前に自分の体調を鑑みて最初にトイレ入っておくとか、そういう風にならないようにしていくってことでしょ?いとうあさこさん?
いとうあさこ:うーん、やっぱり試験って全て総合な気がするんですよね。
勉強だけじゃなくて、例えばその日に向けて風邪をひかないようにするも一個の試験のアレだし、それとなんか一緒な気がして。
ただ、トイレ・・・
松本人志:「そこで催してるようなやつはもうダメだ!」っていう話?
いとうあさこ:催すも前と後ろでまた事情が変わりますから。
それによってもまた分かんないですけど…我慢できないことがあることも分かったうえで、全て総合して試験な気が。
佐々木恭子:コンディション整えないといけないと。
トラウデン直美:それもコントロール出来るようにならないといけないと。
東野幸治:井頭さんはどうなの?高校、中学、試験は?
井頭愛海:私の学校ではトイレに行きたくなったら一回出ていくじゃないですか?
そしたら、みんなのテスト受けてる部屋には戻らず別室でテストの続きを受けてたりします。
東野幸治:それはどういうことなの?なんかあんの?
井頭愛海:一応カンニングしないためなのか・・・
いとうあさこ:席に戻るときに他の子の?
井頭愛海:そうですね。
佐々木恭子:それこそ司法試験とかどうなんですか?長いですよね、時間。
犬塚浩:私達の頃はスマホが全くありませんでしたので、今考えると非常に牧歌的でした。
真夏に冷房効いてないところで三日間くらいやるんですけど、三日目になると体調崩す人なんかが出てきますけども。
トイレに行くにも監督員の数が限られていますので、特に男性の場合は入らないところもありますので、割と「もう行ってきなさい」みたいなかたちで私達の時代は行われてましたけど、今はやはり非常に厳しくなったという風に聞いてます。
世間の声
放送の該当部分に対するツイート(世間の意見)がまとまっていたので紹介します。
合わせて参考にしてください。
配慮制度
他試験の状況
今回の話題は日商簿記試験ですが他の試験の場合はトイレ退室はどう扱われているのか?
◎トイレ退出後、再入室可能な試験(例)
- 大学入試センター試験
- TOEIC
- 司法試験
※退出した時間の補充はない
◎トイレ退出後、再入室不可能な試験(例)
- 日商簿記検定
- 漢字検定:試験時間の半分が経過するまでに退室すると棄権扱いとなり、後半は退室はできるが再入室は不可
障害者差別解消法による「合理的配慮」
『障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)』
が2016年(平成28年)4月1日に施行されました。
法律の制定目的は、障害者基本法に実効性を持たせることとされています。
この法律により、日本国政府や地方公共団体・独立行政法人・特殊法人などは、障害者への合理的配慮に対策を取り込むことが義務付けられました。
まだ民間事業者については、努力義務とされています。
この「合理的配慮」という言葉がいかにも抽象的ですが、具体的にどういうことなのか、内閣府の説明を引用します。
う~ん。説明も抽象的ですね。
というか、「合理的配慮」を言語で完全に定義するのは不可能ですね。
よって、こいうものが合理的配慮だという具体例が内閣府から提供されています。
その名もずばり、
合理的配慮等具体例データ集(合理的配慮サーチ)
このネーミングも少し笑ってしまいますが、こういうものは個別具体例を積み重ねていくしかないと思います。
気になる方は合理的配慮サーチを見ていただいたり、「合理的配慮 障害者差別解消法 」などでキーワード検索してみてください。
「合理的配慮」の具体例~IBDの場合~
今日は試験中のトイレの話なので、その具体例を、特にIBDの方の場合はどうなるかという的に絞って紹介します。
大学入試センター試験
試験と言えば、受験ですね。
毎年1月に行われ、多くの受験生が利用するセンター試験を取り上げます。
大学入試センター試験は独立行政法人大学入試センターにより運営されているので、先述の合理的配慮が義務付けられています。
この件は、大学入試センター試験のホームページに「受験上の配慮案内」として掲載されています。
視覚、聴覚、発達障害などの区分があるなかで、IBDの場合は「病弱に関する配慮」のうち、慢性の消化器疾患のケースに該当すると考えられます。
配慮する事項としては、
- 別室の設定
- トイレに近い試験室で受験
- 座席を出入り口の近いところに指定
が該当すると考えられます。
当然、必要書類を提出し事前申請し、審査の上で配慮事項が決定されますが、制度は一応整っていると考えていいと思います。
司法試験
法務省管轄の司法試験についても、事前申請と審査の上、下記のような配慮の案内があります。
宅建試験
では民間団体が主催する資格試験の場合はどうでしょう。
先述しましたが、民間事業者に「合理的配慮」への法定義務は無くあくまで努力義務(遵守されるか否かは当事者の任意の協力にのみ左右される)です。
宅地建物取引士資格試験(宅建試験)は、一般財団法人不動産適正取引推進機構が実施するものです。民間団体ですね。
ホームページのQ&Aを確認したところ宅建試験では、
不正受験防止の観点から、試験時間中の途中退出は禁止します。
とされています。
配慮についての項目もありましたので、以下に引用します。
身体に障がい等がある。受験の際に配慮してほしい。
回答
車いす使用等歩行困難で低層階での試験室を希望する方や、体幹機能や視聴覚等の障がいがあり通常の試験方法による受験に支障がある方は、受験申込みの際の申出により、一定の配慮をすることができます。申出の時期や障がいの内容によっては配慮できないこともあります。受験申込みの際に、協力機関にご相談ください。
「協力機関」とは、各都道府県の宅地建物取引業協会になっています。基本的に上記の回答に準拠すると思いますが、「協力機関」のWebページも確認しました。
- 【東京都】(公財)東京都防災・建築まちづくりセンター
→記載なし - 【大阪府】(一財)大阪府宅地建物取引士センター
→「身体等に障がいのある方の受験については、受験会場等の配慮を行いますので、受験申込みの際に希望される事柄を記入した書面を同封してください。また、障がい者手帳など公的証明書類のコピーを添付してください。」 - 【愛知県】(公社)愛知県宅地建物取引業協会
→記載なし
ということで、IBDまで配慮されるかは不明です(おそらくその可能性は低そうです)。
おわりに
今回調べた結果では、公的機関が実施する試験に関しては障害者差別解消法 により合理的配慮が成され、IBD患者でも何らかの配慮が受けられる制度はあると分かりました。
その制度が十分か不十分かは意見が別れるかも知れもませんが、制度上は障害や疾患により不公平が生じない社会になるような流れになろうとしています。形式的なものでなく実効性のあるものにしようという流れは歓迎すべきです。
施策や活動はどんなに崇高な理念を掲げても、実効性がないと意味がないと思ってます。
何事もお金がかかりますからね。
ヘルプマークについての活動に対する懸念もそのあたりです。
また『ワイドナショー』に対する世間の意見にもあるように、まだトイレは「生理現象」で、疾病によるコントロールできない症状の場合もあるという理解は浸透していません。
今回の番組についても、その番組に対する反応についも、悪意がある発言とは思いませんが、知識としてIBDのような疾患が一般的に浸透すれば、民家業者における試験でも「合理的配慮」が浸透していくと思います。
該当の放送も見ましたが、特に悪意がある発言とは思いませんでした。
ただ、病気のこと、便意をコントロールできない人もいることが広まればと願います。高橋メアリージュン、「試験中のトイレ問題」に言及#潰瘍性大腸炎 https://t.co/guyMMJvtlB
— 潰瘍性大腸炎になったら読むブログ (@UCinfo_blog) 2019年1月29日
〈おわり〉