ニュース内容
UCの基本薬である5-ASA製剤市場の変化に関するニュースです。
潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病(CD)といった炎症性腸疾患(IBD)治療で、重症ではない症状で広く処方されるメサラジン製剤。2016年11月に発売開始された持田製薬のUC治療薬「リアルダ」が販売を大きく伸ばしていることで、市場が変化しつつある。このほど発表された2018年4~9月期の実績では、前年同期比412%増となる30億円の売り上げを達成。今期通期の予想も58億円とし、期初予想を20億円上積みした。
リアルダが大幅に伸長したことについて持田製薬は「昨年12月に長期処方制限が解除されたこと」(広報室)を主な理由に挙げる。また、活動期も寛解期も1日1回投与による治療が可能な点や、競合品に比べて1日最大投与量も多いことなどが治療ニーズに合致し「想定以上の伸びを示している」との見方を示している。
潰瘍性大腸炎のうち、左側大腸炎型や全大腸炎型の軽症から中等症の寛解導入療法では、メサラジンやサラゾスルファピリジン(ファイザーの「サラゾピリン」)といった5-ASA製剤が第1選択だ。直腸炎型でも、坐剤や注腸剤ではステロイド製剤も使われるが、基本的には経口の5-ASA製剤が投与される。寛解維持療法のうち非難治例では経口を含む5-ASA製剤の投与が行われる。5-ASA製剤のうち、杏林製薬の「ペンタサ」はCDの適応も取得している。
競合「アサコール」は苦戦
リアルダと適応症が一致しており、市場的にも重なりが大きいゼリア新薬工業の「アサコール」は、為替の影響を受けやすい海外売上高との合計額のみの開示で18年4~9月期実績は75億3400万円となり、前年同期比で16%減と大きく減らした。海外売り上げが60%を超えることに加え、為替変動幅が大きいスイスフラン建ての取引が中心といった要因もあり単純には比較できないが、同社の伊部充弘社長は6日の決算説明で「国内では、競合品の市場浸透、後発医薬品の使用促進策の影響を受けて苦戦した」と18年度上半期の状況を振り返った。
IBDの領域では、後発品への切り替えが他の疾患領域に比べて進みにくいといわれる。伊部社長も「後発品への切り替えは大きく進んでいないが、新薬の処方増が急速に進み、影響を受けている」との見方を示し、アサコールの国内売り上げの減少がリアルダの販売増によるものだとの認識を示した。
アサコールは17年5月に、寛解期には通常3回に分ける1日量(2400mg)を1日1回投与可能とする用法・用量を追加し、患者のアドヒアランス向上を図った。ただ、「(他剤や後発品への)切り替え防止や新規患者獲得時の訴求ポイントとして情報提供活動を展開してきたものの、切り替えを抑制するには至っていない」(伊部社長)という状況もあり、新規製剤の市場投入を目指している欧州を軸とした海外市場での拡販を進めたい考えだ。
同剤を併売する協和発酵キリンの18年1~9月期実績でも、前年同期に32億円だった売上高は22億円と10億円の減となっている。
「ペンタサ」も上期実績9億円減
杏林製薬のペンタサは18年4~9月期実績で71億円(前年同期比9億円減)。期初予想からも2億円減となった。キョーリン製薬ホールディングスは「一番大きいのは薬価改定。それ以外では後発品使用促進策の影響がある」(コーポレートコミュニケーション部)としたが、市場シェアの低下も一定程度あったことも認めている。通期予想は前期比8億円減の145億円を見込んでいる。
リアルダの大幅伸長を見込む持田製薬。同社の消化器領域では今期に慢性便秘症治療薬「グーフィス」(EAファーマとの共同開発、共同販売品)を発売しており、20年度までの中期経営計画で循環器や産婦人科と並ぶ重点領域に位置付けている。薬価収載時の中医協資料で発売後6年度(21年度)で56億円と見込んでいたリアルダのピーク時予測は、今年度中に達成できる見通しだ。すでに治療している患者での処方の切り替えが進みにくいとされるIBD治療領域でどこまで拡大・浸透するのか、注目が集まる。
所感
患者側では、1日1回服用で済むのは大きなメリットと感じます。
また、1日最大投与量も多い点が治療メリットとなるのは、5-ASA製剤は大腸に一定以上届かないと効果が出ないので、十分な量を投与することが重要とされており、かつ高用量の投与でも比較的副作用がなく安全性に優れているという背景があります。
潰瘍性大腸炎における5-ASA製剤の用法容量を下表にまとめたので、参考にしてください。
最後に製薬業界の動向がどうあれ、患者としては処方量の服用を順守することが長期の寛解維持のポイントです。
おわり。