こんにちは。
以前の記事で、「病気について自ら学ぼう」とお伝えしました。
病気について自ら学ぼう今日は、薬や治療方法について学ばれる際に意識するといい点をお伝えします。
寛解と再燃
まずは、簡単な前置きです。知っているかたは読み飛ばしてください。
潰瘍性大腸炎の臨床経過(診断が下ったあと、どのように病状が経過するか)は人それぞれですが、「寛解再燃型」の方がもっとも多いとされています。
寛解(かんかい):症状がコントロールできており、落ち着いている状態。根本原因が不明で完全に治ったわけではないため「治癒」という言葉ではなく「寛解」という言葉を使う。寛解している期間を「寛解期」といったりする。(“緩“解と書く場合もある)
再燃(さいねん):症状が(寛解状態から再び)悪化している状態。再燃している期間を「活動期」といったりする。「自然寛解」といって、特別な治療を行わなくても症状が収まることもありますが、一般には強い治療を行って寛解に導入する必要があります。
二つの治療の目的
潰瘍性大腸炎の治療の目標は、寛解期を長く維持することです。
このいい状態(寛解期)を維持する治療が「寛解維持療法」です。
しかし、仮に現在症状が悪化している状態(活動期)であれば、いったん寛解状態まで導く治療が必要です。この治療が「寛解導入療法」です。
図1を見てみましょう。
縦軸は活動性で山が高くなるほど症状が重いです。横軸は時間です。
寛解維持療法は、症状がない図の青線の状態を長く維持することが治療の目標です。
寛解導入療法は、ピンクの山の状態を青線の状態まで持っていくこと(ピンクの山の高さをできるだけ抑える)が治療の目標です。
寛解維持療法、寛解導入療法それぞれに薬や治療方法もことなります。
例えば、この病気の基本薬である5-ASA製剤は寛解維持、寛解導入どちらの場合でも服用します。(基本薬または第一選択薬とは、治療の最初に投与される薬で、副作用が少なく、有効性が高いものが選ばれる)
一方、ステロイド薬の場合は強力に炎症を抑える効果があるので、寛解導入に有効ですが、再燃の予防効果はないとされており、寛解維持には用いられません。
また、寛解維持療法は長期間継続して薬を服用する必要がありますが、ステロイド薬の長期使用は様々な副作用を伴う危険性がありますので、この面からも寛解維持療法には不向きです。
薬・治療方法 | 薬の例 | 寛解維持療法 | 寛解導入療法 |
5-ASA製剤 | ペンタサ、アサコール錠 | ○ | ○ |
ステロイド剤 | プレドゾロン内服・点滴 | – | ○ |
血球除去療法 | GCAP、LCAP | – | ○ |
免疫調整剤 | イムラン、ロイケン | ○ | – |
免疫抑制剤 | プログラフ、サンディミュン | – | ○ |
生物学的製剤 | レミケード、ヒュミラ | ○ | ○ |
以上です。
これから、個々の薬や治療法について学ばれる際、それがどちらの治療方針に基づいたものか意識してみてください。