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【潰瘍性大腸炎のお薬】プログラフ®(タクロリムス)

こんにちは。

今日は、個別の薬の解説編です。第一弾で取り上げるのは日本発の免疫抑制剤であるプログラフ®(タクロリムス)です。

なんで5-ASAからじゃないんだという声が聞こえてきそうですが、、、(次回以降に取り上げます)

はじめに基本的なくすりの概要を記し、続く章に患者視点での情報を綴っています。

薬カテゴリーの記事ついて
  • 各患者様における用法用量などは担当医または薬剤師の指示をお守りになるようお願いいたします。
  • 複数疾病に適応されている薬の場合は、潰瘍性大腸炎・IBDへの適応に関する情報に特化して掲載しています。
  • 確かなソースのある内容を掲載するつもりですが、医療従事者ではありませんのであくまで患者個人の発信情報としてお役立てください。

プログラフ®(タクロリムス)概要

一般事項

名称

  1. 一般名
    • 和名
      タクロリムス水和物(JAN)
    • 洋名
      Tacrolimus Hydrate (JAN)、tacrolimus (INN)
    • ステム
      免疫抑制剤:-imus
  2. 商品名
    • 先発薬
      プログラフカプセル0.5mg、同カプセル1mg、同カプセル5mg(アステラス製薬)
    • 後発薬
      ※あり:タクロリムスカプセル0.5/1/5mg(日本ジェネリックほか)
  3. 慣用名、別名、略号、記号番号
    • 治験番号:FR900506、FK506

剤形

硬カプセル剤
※顆粒剤や錠剤もありますが、UC適応はカプセル剤のみです。

外観

0.5mgは淡黄色、1mgは白色、5mgは灰赤色です。

プログラフカプセル外観

UC治療薬として

潰瘍性大腸炎への適応

  • 難治性(ステロイド抵抗性、ステロイド依存性)の活動期潰瘍性大腸炎(中等症~重症に限る)
  • 適応開始 2009年7月7日~
注意
  1. 潰瘍性大腸炎では、治療指針等を参考に、難治性(ステロイド抵抗性、ステロイド依存性)であることを確認すること。
  2. 潰瘍性大腸炎では、本剤による維持療法の有効性及び安全性は確立していない。

潰瘍性大腸炎治療での位置づけ

『潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針(平成29年度 改訂版)』より

用法・用量

潰瘍性大腸炎の場合

通常、成人には、初期にはタクロリムスとして1回0.025mg/kgを1日2回朝食後及び夕食後に経口投与する。以後2週間、目標血中トラフ濃度10~15ng/mLとし、血中トラフ濃度をモニタリングしながら投与量を調節する。投与開始後2週以降は、目標血中トラフ濃度を5~10ng/mLとし投与量を調節する。

用法・用量に関する使用上の注意
  1. 潰瘍性大腸炎では、治療初期は頻回に血中トラフ濃度を測定し投与量を調節するため、入院又はそれに準じた管理の下で投与することが望ましい。
  2. 潰瘍性大腸炎では、原則、1日あたりの投与量の上限を0.3mg/kgとし、特に次の点に注意して用量を調節すること。
    1. 初回投与から2週間まで
      • 初回投与後12時間及び24時間の血中トラフ濃度に基づき、1回目の用量調節を実施する。
      • 1回目の用量調節後少なくとも2日以上経過後に測定された2点の血中トラフ濃度に基づき、2回目の用量調節を実施する。
      • 2回目の用量調節から1.5日以上経過後に測定された1点の血中トラフ濃度に基づき、2週時(3回目)の用量調節を実施する。
    2. 2週以降
      • 投与開始後2週時(3回目)の用量調節から1週間程度後に血中トラフ濃度を測定し、用量調節を実施する。また、投与開始4週以降は4週間に1回を目安とし、定期的に血中トラフ濃度を測定することが望ましい。
    3. 用量調節にあたっては服薬時の食事条件(食後投与/空腹時投与)が同じ血中トラフ濃度を用いる。
  3. 潰瘍性大腸炎への投与にあたってはカプセル剤のみを用い、0.5mg刻みの投与量を決定すること。
  4. 潰瘍性大腸炎では、2週間投与しても臨床症状の改善が認められない場合は、投与を中止すること。
  5. 潰瘍性大腸炎では、通常、3カ月までの投与とすること。

使用上の注意

重要な基本的注意

  1. 過度の免疫抑制により感染に対する感受性の上昇、リンパ腫等の悪性腫瘍発生の可能性があるので、十分注意すること。
  2. 本剤の投与により副腎皮質ホルモン剤維持量の減量が可能であるが、副腎皮質ホルモン剤の副作用の発現についても引き続き観察を十分行うこと。
  3. 潰瘍性大腸炎における本剤の投与は、潰瘍性大腸炎の治療法に十分精通している医師のもとで行うこと。

副作用

◯潰瘍性大腸炎の場合

承認時までの臨床試験において、本剤を最長3カ月間投与した潰瘍性大腸炎患者137例(カプセル137例)での主な副作用・臨床検査値異常

  • 振戦 29.2%(40/137)
  • 低マグネシウム血症 16.8%(23/137)
  • ほてり 13.9%(19/137)
  • 尿中NAG増加各 13.9%(19/137)
  • 感覚異常 12.4%(17/137)
  • 尿蛋白 8.0%(11/137)
  • 高血糖 7.3%(10/137)
  • 悪心 6.6%(9/137)

市販後の調査において、本剤を投与した潰瘍性大腸炎患者671例での主な副作用・臨床検査値異常

  • 振戦 7.5%(50/671)
  • 低マグネシウム血症 6.3%(42/671)
  • 腎機能障害 3.1%(21/671)
  • 肝機能異常 3.0%(20/671)
  • 頭痛 2.5%(17/671)
  • クレアチニン上昇各 2.5%(17/671)

飲食注意

グレープフルーツ、ブンタン、八朔などの柑橘類

※タクロリムスの血中濃度が上昇し、腎障害等の副作用が発現することがある。

妊婦、産婦、授乳婦等への投与

妊婦等

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[動物実験(ウサギ)で催奇形作用、胎児毒性が報告されている。ヒトで胎盤を通過することが報告されている。妊娠中に本剤を投与された女性において、早産及び児への影響(低出生体重、先天奇形、高カリウム血症、腎機能障害)の報告がある。

授乳婦

本剤投与中は授乳を避けさせること。[母乳中へ移行することが報告されている。]

患者視点の情報

「潰瘍性大腸炎治療での位置づけ」でも紹介しましたが、内科治療では最も強い治療の一つです。

研究班 患者向け冊子「潰瘍性大腸炎の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識(第3版)」より

いわゆる、非常に「切れ味の良い」お薬です。

僕個人としては、発症時の手術適応寸前であった状態から救われた薬でもあります。「プログラフ様様」なので、開発の歴史なんかを調べてしまいました。

プログラフは藤沢薬品工業(現:アステラス製薬)が研究開発した日本発の医薬品です。ちなみに、開発者の後藤俊男(アステラス製薬研究本部副本部長・60歳・受賞当時)さんは、2007年春にその功績を評されて紫綬褒章を受賞されています。また、その作用機序を解明したハーバード大学のスチュアート・シュライバー教授は、タクロリムスをツールとして様々な生命現象の解明を行っており、これらの研究はケミカルバイオロジーという一分野を成すまでに発展しました。

参考 茨城の土壌細菌から生まれた薬が、世界の人々の命を救う!茨城県

効果が強力な薬はその分注意も必要です。

強力に免疫を抑制しますし、基本は重症例での使用になるので、基本は入院しての使用になりますが、退院後もある程度の期間継続使用する場合があります。そのため、日常生活でも感染症への配慮が必要です。僕はずっとマスクをして、手洗いうがいを心がけており幸い服用終了まで何事もなく過ごせました。

プログラフの服用時間について

また、有効成分の血中濃度(トラフ濃度)を一定の範囲にコントロールすることが重要な薬です。当然、入院時はしっかり服用管理されると思います。僕の場合他の薬はざっくり「食後」でしたが、プログラフはきっちり7時・19時の12時間毎に服用時間を決められていました。

そして、薬剤の吸収率が食事の影響を受けるので、食事の摂取と薬の服用時間を一定に保つ必要が(実は)あります。

参考 III.薬と食事の相性 75.タクロリムス水和物と食事医薬ジャーナル社

これ、決まった時間に食事が出てくる入院中は特に注意しなくても問題がないのですが、働きだしてからはなかなか難しいことも多いです。仮に食事の時間がずれ込んでも、薬の服用時間は守るように努めましょう。

いつも、食事18時、プログラフ服用は2時間後の20時だが、今日は仕事で遅くなって食事が21時になりそう・・・どうしよう?

👉 食後2時間後の23時ではなく、食前になってもプログラフ服用20時を優先する。

この辺のことも、あまりよく知らなかったという人がいるようです。僕もきちんと調べるまでなんとなくしか把握していませんでした。

下記の紹介例では、食前となっていますが、一般には食後の場合が多いようです。重要なのは、食後なら食後、食前なら食前というように、食事時間と服用時間の相対関係を一定に保つことです。

参考 免疫抑制剤の服用タイミング -決められた時間に決まった量を飲み続けるために-MediPress

プログラフ経口服用量について

通常、初期には0.025mg/kgを1日2回、つまり0.05mg/kg/dayとされていますが、僕の場合は服用開始から0.12mg/kg/day程度入れていました。

下記の仲瀬裕志先生(当時:京大医学部附属病院内視鏡部)の記事でも、寛解導入のためには血中トラフ値を比較的早急に上げる必要があり、経口の場合0.1~0.15mg/kg/dayから開始するとあります。

参考 潰瘍性大腸炎に対するタクロリムスによる治療(pdf)日本消化器病学会雑誌第110巻第11号

このあたりは、先生によってノウハウがあるんだと思います。結局服用量はともあれ、血中トラフ濃度を狙いまで上げるのが大切だと把握しておきましょう。

ちなみに、紹介した資料はでは、(1)寛解維持治療への応用(2)生物学的製剤との使い分け(3)他剤との併用療法などが潰瘍性大腸炎におけるタクロリムス治療の課題として挙げられています。服用している方は勉強になるので読んでみるのをおすすめします。

参考までに僕の事例ですが[トラフ濃度と服用量]の変化についてまとめました。

【実例紹介】タクロリムス(プログラフ®)の服用量と血中トラフ濃度の関係

※本内容は、下記資料より内容を一部抜粋・改変しています。

  • プログラフカプセル0.5mg/プログラフカプセル1mg(アステラス製薬)添付文書【2018年7月改訂(第39版)】
  • 潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針【平成29年度 改訂版(平成30年3月)】

おわり

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