こんにちは。
今日は書籍のレビューです。
取り上げる書籍は、『潰瘍性大腸炎 患者が本当にききたいことー129のQ&A』です。
まずは書籍情報から。
- タイトル:「潰瘍性大腸炎 患者が本当にききたいことー129のQ&A」
- 出版社:弘文堂
- 著者(編集):日本炎症性腸疾患協会 編・ 福島恒男 編・ 斎藤恵子 レシピ
- 出版年:2008年12月
- 判型・ページ数:A5 並製 192ページ
- ISBN:978-4-335-76012-9
- 定価:1,900円+税
内容紹介
<紹介文>
すべての疑問に答えます! 決定版Q&A!
10~20代の発症が急増しており、特定疾患に認定されている潰瘍性大腸炎。日本の患者数は10万人に迫る勢いです。
長い期間病気と付き合っていく患者さんが、本当にききたいこと……治療、手術、人工肛門、食事、学校や仕事のこと、医療費……など全129問に、最前線で治療に関わる医師がやさしく答えます。
付録として、全国にいる潰瘍性大腸炎の診療医リストを掲載。どこの病院にかかったらいいか分からないという患者さんの道しるべになります。
また『安心レシピでいただきます!』の著者・斎藤恵子先生によるレシピ付きで、食生活もサポート。コラムに患者さんのメッセージを載せ、メンタル面でもサポートします。
これ1冊で、患者さんの生活すべてをバックアップします。
章立ては、下記の通りです。
- 第1章:診断を受ける前に・・・
- 第2章:潰瘍性大腸炎ってどんな病気?
- 第3章:治療をはじめましょう
- 第4章:子供や高齢者の潰瘍性大腸炎
- 第5章:合併症
- 第6章:妊娠・出産
- 第7章:病気と上手につきあいましょう
- 第8章:潰瘍性大腸炎の安心レシピ
基本的な書籍の構成は、各章題に関連したQ&A形式で進められます。
例えば、第1章のQ3は、セカンドオピニオンについてです。
セカンドオピニオンを求めたいのですが、現在の主治医にはお願いしにくいです。どのようにいったら良いでしょうか?また、紹介状がないと専門医に書かれませんか?
今日では、患者さん側も医師・病院を選択する時代で、炎症性腸疾患に限らず、セカンドオピニオンは普通に行われており特殊なことではありません。炎症性腸疾患の場合も同じで、セカンドオピニオンを求めたければ~
結構、あるあるな疑問ではあるけれど、どう調べていいか分からないような疑問ですね。
もちろん病気についての基本に関するQ&Aは十分に押さえれたうえで、上記のような、かゆいとろこに手が届くQ&Aも充実しています。
回答も丁寧です。回答の執筆は、消化器内科・外科の医師が担当しています。兵庫医大、三重大、横浜市立大、横浜市民病院などIBD治療で有名な医療機関に属する先生です。
Question一覧
公開情報のため、引用掲載します。
気になったQuestionはあったでしょうか?
Q1 下痢と腹痛が続いていて、便に血が混じることがあり、不安です。どんな病院でどんな検査を受けたらいいのでしょうか?
Q2 潰瘍性大腸炎の疑いがあると言われました。どのような医療機関で、どのような医師の診察を受けたらいいのでしょうか?
Q3 セカンドオピニオンを求めたいのですが、現在の主治医にはお願いしにくいです。どのように言ったらいいでしょうか。また、紹介状がないと専門医にかかれませんか?
Q4 潰瘍性大腸炎の診断には、どのような検査があるのでしょうか?
Q5 潰瘍性大腸炎と似たような症状が出る病気はありますか?
第2章 潰瘍性大腸炎ってどんな病気?
Q6 潰瘍性大腸炎とはどのような病気ですか?
Q7 「あなたは直腸炎型です」と言われましたが、それはどういう意味ですか?他の型もあるのですか?
Q8 潰瘍性大腸炎の原因は何ですか?
Q9 患者さんは日本にどの位いるのですか?
Q10 難病と言われたのですが、潰瘍性大腸炎は治らないのですか?
Q11 難しい病気だと言われましたが、潰瘍性大腸炎が原因で亡くなることはあるのですか?
Q12 潰瘍性大腸炎は人に移りますか?
Q13 潰瘍性大腸炎は子どもに遺伝しますか?
第3章 治療を始めましょう
3-1 通院治療
Q14 受診するときには何を準備したらいいのでしょうか?
Q15 大腸内視鏡検査とはどのような検査ですか?
Q16 血液検査の結果をもらいました。自分の病気の状態を知るために必要なデータの読み方を教えてください。
Q17 どのような治療法があるのですか?
Q18 治療には、どのような薬が使われますか?
Q19 それぞれの薬はどのようなときに使われるのですか?その薬を飲む時の注意点や副作用なども教えてください。
Q20 注腸薬にはどのような種類があるのですか?
Q21 注腸の薬を処方されました。この薬を使うコツはありますか?
Q22 ペンタサとサラゾピリンの違いを教えてください。
Q23 ステロイドを使うときの注意点は何でしょうか?
Q24 薬を飲んだら下痢も止まり、状態がよくなりました。もう通院しなくてもいいですか?
Q25 薬はいつまで飲まなければならないのですか?
Q26 市販の痛み止めや風邪薬を飲んでもいいのでしょうか?
Q27 市販の下痢止めを飲んでもいいのでしょうか?
Q28 市販の下痢止めを飲んでいるのですが、これは潰瘍性大腸炎に効きますか?
Q29 漢方薬は潰瘍性大腸炎に効きますか?
3-2 内科入院
Q30 どのようなとき入院治療が必要になりますか?
Q31 入院したら、必ず手術をしなければならないのでしょうか?
Q32 入院はどれ位の期間になりますか?
Q33 入院中の治療について教えてください。
Q34 入院中の食事はどのようなものですか?また、いつ頃から食べられますか?
Q35 どのような状態になったら退院できますか?
3-3 手術
Q36 どのようなときに手術が必要になりますか?
Q37 手術による入院期間はどれ位ですか?
Q38 手術をするメリットとデメリットを教えてください。
Q39 どのような手術を行うのですか?
Q40 手術直後ですが、便が日に10回以上と多く、肛門に痛みがあります。血便も続いて不安です。便回数はずっとこんなに多いのですか?
Q41 術後は痛いのですか?
Q42 術後の合併症にはどのようなものがありますか?
Q43 回腸嚢炎とはどのような病気で、どのような治療法があるのでしょうか?
Q44 手術をすれば完治するのでしょうか?手術をしても治療の継続は必要なのですか?
Q45 大腸がなくなってしまうのは、とても不安です。術後の生活はどうなるのでしょうか?また、退院直後の生活で注意することはありますか?
3-4 人工肛門
Q46 人工肛門とはどのようなものですか?
Q47 人工肛門は一生ですか?
Q48 人工肛門のケアや注意点を教えてください。
Q49 装具にはどのような種類があるのでしょうか?選び方や捨て方も教えてください。
Q50 人工肛門の装具を買うのに、何か補助とか、社会的な保障制度はありますか?
Q51 どのような食事をしたらいいでしょうか?
Q52 お風呂に入ることはできますか?
Q53 学校や会社には、どのように説明したらいいでしょうか?
Q54 運動はできますか?スイミングはどうですか?
Q55 外出するのが不安です。どのようなことに注意したらいいか、よいアドバイスをください。
Q56 旅行や温泉に入ることは可能ですか?
Q57 人工肛門になった場合、性生活や出産への影響はありますか?
第4章 子どもや高齢者の潰瘍性大腸炎
4-1 子どもの潰瘍性大腸炎
Q58 小さい子どもでも発症することはありますか?
Q59 子どもの場合には、大人の潰瘍性大腸炎と何か違う特徴があるのでしょうか?また特に注意しなければならないことはありますか?
Q60 子どもの場合の治療法を教えてください。
Q61 成長障害について教えてください。
Q62 下痢が続いていて栄養状態が心配です。食事はどのようなものを食べさせたらいいでしょうか? また、何か食べてはいけないものはありますか?
Q63 学校生活で気をつけることは何でしょうか?
Q64 学校に病気をどのように説明したらよいでしょうか?また、学校の給食を食べられない場合、学校には食事のことをどのように説明したらいいでしょう?
Q65 お弁当に何を持たせたらよいのか困っています。
Q66 子どもがおやつを欲しがります。どのようなものを食べさせたらいいでしょうか?
Q67 お友だちと外食をしたがります。子ども同士のお付き合いもあるのでだめとも言えません。どのように食べるものを選ばせたらいいでしょう?
Q68 どのように子どもに接したらいいのかわかりません。
Q69 潰瘍性大腸炎の子の兄弟姉妹には、親としてどのように接したらいいでしょうか?また疾患についてどのように説明したらいいでしょう?
Q70 社会保障制度について教えてください。
4-2 高齢者の潰瘍性大腸炎
Q71 高齢になってから潰瘍性大腸炎を発症しました。若い人と違う点や特に注意しなければならないことはありますか?
Q72 治療法はどのようなものがあるのでしょうか?
Q73 年をとると症状は落ち着くのですか?
第5章 合併症
Q74 合併症にはどのようなものがありますか?
Q75 大出血とはどのような状態を言いますか?どのように対処したらいいでしょう?
Q76 穿孔とは何ですか?
Q77 炎症性ポリポーシスとは何ですか?
Q78 中毒性巨大結腸症とは何ですか?
Q79 狭窄とは何ですか?潰瘍性大腸炎でもなることがありますか?
Q80 潰瘍性大腸炎だとガンになりやすいのでしょうか?
Q81 潰瘍性大腸炎による痔について教えてください。
Q82 潰瘍性大腸炎では骨粗鬆症になりやすいのですか?
Q83 関節が硬直したり痛むことがあります。これは潰瘍性大腸炎と関係があるのでしょうか?
Q84 潰瘍性大腸炎は皮膚にどのような影響を与えますか?その治療法も教えてください。
Q85 潰瘍性大腸炎の目への影響はどのようなものですか?
Q86 潰瘍性大腸炎から腎臓結石になることがあるのでしょうか?
Q87 その他の臓器にも潰瘍性大腸炎は影響を与えるのですか?
Q88 潰瘍性大腸炎と糖尿病を患っています。どちらの食事療法を優先させたらいいのでしょう?
第6章 妊娠・出産
Q89 女性の場合、潰瘍性大腸炎は月経に影響がありますか?
Q90 女性の場合、妊娠に影響はありますか?
Q91 男性不妊に影響はありますか?
Q92 病気がどのような状態のときに妊娠するのがいいのでしょうか?
Q93 女性の場合、妊娠・出産で病気が悪化することはあるのでしょうか?
Q94 潰瘍性大腸炎は子どもに遺伝しますか?
Q95 妊娠前に飲んでいた薬が、妊娠や子どもに影響することはありますか?
Q96 妊娠中も薬飲み続けなければならないのでしょうか?その場合、薬は子どもに何か影響しますか?
Q97 妊娠中の食事で特に気をつけた方がいいことはありますか?
Q98 妊娠中に再燃してしまいました。どのような治療をするのでしょうか?
Q99 妊娠中に潰瘍性大腸炎の検査を行うのは安全ですか?
Q100 出産にあたってはどのような点に注意したらいいでしょうか。
Q101 授乳中も薬を飲み続けるのですか?それは安全なのでしょうか?
Q102 育児をサポートする制度はありますか?また、育児にまつわるアドバイスをお願いします。
[コラム] 潰瘍性大腸炎で育児すること
第7章 病気と上手につきあいましょう
7-1 日常生活の注意点
Q103 緩解期にも専門病院にかかったほうがいいのでしょうか?
Q104 下痢が続いており、トイレが間に合わず下着を汚してしまうことがあります。何かよい対処法はありますか?
Q105 トイレがないと不安で遠出ができません。精神的なものと分かっているのですが、何かよい対処法やアドバイスはありませんか。
Q106 また下痢をすると嫌なのでなるべく水分を摂らないようにしていますが大丈夫でしょうか?また、どのような食事を心がけたらいいでしょうか。
Q107 状態のいいときにはどのようなものを食べたらいいでしょうか?
Q108 状態の悪いときにはどのようなものを食べたらいいでしょうか?
Q109 手術して退院直後には、どのようなものを食べたらいいでしょうか?
Q110 潰瘍性大腸炎で不足しがちな栄養は何かありますか?それを補うのによいサプリメントがあったら教えてください。
Q111 食べないほうがいいものはありますか?牛乳は飲んでもいいのですか?
Q112 お酒は飲んでもいいのでしょうか?喫煙は潰瘍性大腸炎にもよくないのでしょうか?
Q113 下血が少しありますが、摂生した方がいいのでしょうか?
Q114 たくさん食べてしまうことがあるのですが、いいのでしょうか?
Q115 ストレスは病気によくないと聞きますが、どのように対処したらいいでしょうか?
Q116 潰瘍性大腸炎になってから、将来のことが心配でたまりません。何かよいアドバイスはありますか?
Q117 運動はしてもいいですか?
[コラム] 民間療法
7-2 社会生活の注意点
Q118 学校に病気のことをどのように説明したらいいでしょうか?
Q119 会社に病気のことをどのように説明したらいいでしょうか?
Q120 就学・就職についてアドバイスがあったらお願いします。
[コラム] 潰瘍性大腸炎の方の就労
7-3 社会支援
Q121 病院で特定疾患の申請をするように言われましたが、それはどのようなもので、どうやって申請をするのですか。
Q122 通院時の医療費はどのようになりますか?
Q123 入院時の医療費はどのようになりますか?
Q124 合併症にも特定疾患受給証を使えるのですか?
Q125 障害者手帳は取れるのでしょうか。
Q126 会社を長期間休まなければならず、生活が不安です。何か社会的な保障制度はないでしょうか?
Q127 高齢の場合の社会保障制度について教えてください。
Q128 仕事を辞めてしまったので、退院後、体調がよくなったら再就職を考えています。どのような社会的な支援が受けられますか?
Q129 生命保険には入れますか?
[コラム] 住宅ローンのこと
第8章 潰瘍性大腸炎の安心レシピ
【著者情報】日本炎症性腸疾患協会について
作成元の「日本炎症性腸疾患協会」についてご存知でしょうか?
参考に紹介します。
日本炎症性腸疾患協会
(CCFJ: Crohn’s & Colitis Foundation of Japan)平成16年5月NPO法人として認証され、患者様を中心としたノーマリゼーション社会の実現を支援する活動を開始。講演会、相談会、セミナー等の開催、IBDニュースの発行、書籍の出版などを通して、広く情報を発信し患者様およびそのご家族の方々のQOL恒常を目指す。平成19年には炎症性腸疾患に対する生命保険契約引受基準の一部緩和を実現した。
日本炎症性腸疾患協会
本書籍の編者・福島恒男さんは上記CCFJの立ち上げ発起人の一人でいらっしゃいます。
福島恒男(ふくしまつねお)
昭和40年、横浜市立大学医学部卒業。翌年、横浜市立大学第2外科に入局し、以来潰瘍性大腸炎やクローン病の臨床に多く携わる。
その後、横浜市立市民病院・院長、横浜市立脳血管医療センター長を歴任。
平成16年より日本炎症性腸疾患協会・理事長に就任。炎症性腸疾患の患者様に対する治療やQOL向上のための情報提供なおを、医師としてのライフワークとしている。
評価
おすすめポイント
◎基本のキを網羅的に学べる
病気に関する最低限必要な基本知識を一通り得られると思います。
病気を診断されたのち、最初に手にする一冊としておすすめです。
また、家族やパートナーに病気のことを知ってもらうのにも最適です。
◎病気との付き合いかたを学べる
治療法やくすりの直接医療に係る知識もあるに越したことはないですが、多くの患者にとっては病気をかかえてどう生きるかという生活面により関心が向くと思います。
この本では、仕事、学校生活、妊娠・出産、社会支援等、患者の生活面で懸念されるであろう点も一通り言及されている点がおすすめできます。
注意点
逆におすすめできない点です。
◎専門性はいまひとつ
基本的な点を押さえることはできますが、専門性は高くありません。治療法の踏み込んだことまで知りたいひとには物足りないでしょう。
◎情報が少し古い
2008年出版ということで、いくらか情報が古い部分があります。
医療助成制度については出版時はまだ旧制度ですので、難病法施行(2015年)以降の新制度の情報はカバーしていません。
基本的な治療法についてはカバーしていますが、UC治療の選択肢は日々拡大していますので、最新治療はカバーしていません。例えば、難治性患者の有効な選択肢の一つである生物学的製剤(レミケード®など)に関する記述がありません(レミケードのUC保険適用承認は2010年)。
※レシピはおまけ程度です。レシピを詳しく知りたい人はレシピ専門の書籍の購入をおすすめします。
※お詫び※
紹介しておいて恐縮ですが、現在Amazon等では在庫品切れです。
弘文堂HPによると品切れ・重版未定となっています。
マーケットプレイスでは、何冊か出品があります。
おわり。