2021年2月18日に厚生省より「令和元年度衛生行政報告例」が発表されました。統計より最新の潰瘍性大腸炎の患者数データを紹介します。
例年は、毎年10月末頃に前年度の結果が公表されますが(2019年10月に2018年度のデータが発表されるという具合)、今年は新型コロナウイルス感染症の影響で、発表が遅れた模様です。
なお、今回発表された数字は、2020年3月末(2019年度末)時点の集計値です。
潰瘍性大腸炎患者数
2019年度(令和元年度)データ
特定医療費(指定難病)受給者証の所持者数について、今回発表のデータと前年(平成30年度)からの推移を下に示します。
また、参考にクローン病の数字も一緒に載せています。
潰瘍性大腸炎 | クローン病 | |
---|---|---|
2019年度(令和元年度) | 126,603 | 44,245 |
前年(平成30年度)からの増減 | +1,642 | +1,697 |
潰瘍性大腸炎は前年からプラス1.3%、クローン病は前年からプラス4.0%と、ともに増加しました。
潰瘍性大腸炎の患者数の推移
過去からの推移は、下のグラフのとおりです。
2017年度は、2015年1月施行の難病法の3年間の経過期間が終了し、軽症者が助成対象から外れたため、大幅に減少しました(約4万人減)。2018年度も若干の減少となっています(前年比約3%減)が、2019年度より前述のとおり増加に転じています。
受給者証交付数最多疾患は前年同様に「パーキンソン病」
これまで一貫して指定難病のうち最多の患者数であった潰瘍性大腸炎ですが、2018年度にパーキンソン病が初めて最多となりました。
2019年度も同じく、パーキンソン病が最多、潰瘍性大腸炎が二番目に多い患者数となっています。
次のグラフは、患者数が多い上位5疾患までの、患者数および指定難病全体の患者数に占める累計の割合を示したものです。
上位5疾病の顔ぶれと順位は前年2018年と変わっていません。
潰瘍性大腸炎の患者数が指定難病のなかでも特に多いことは有名ですが、実はクローン病も指定難病全333疾患のなかでかなり患者数が多い部類に入ります。
潰瘍性大腸炎とクローン病をあわせた炎症性腸疾患の患者数の割合、指定難病全体の約18%を占めます。(※指定難病患者全体はおよそ94.6万人)
さて、今年2020年8月の大ニュースといえば、安倍晋三内閣総理大臣が潰瘍性大腸炎の悪化を理由に辞任されました。
これまで、潰瘍性大腸炎の患者数の多さを理由に、再三医療費助成の対象疾患から外れるのではないかという話が持ち上がってきたのは、この病気を抱えるかたならご存知のはずです。一国の首相が同じ病気を抱えていることが、指定難病の継続に何かしらの形で見えない支えとして機能していたかもしれないとすると、これからはどうなるか尚更わかりません。
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて、2021年の受給者証更新は必要なくなりました(2020年3月1日から2021年2月28日までの間に有効期間が満了する場合、有効期限が1年間延長される)。
https://www.mhlw.go.jp/stf/nanbyou_enchou_00001.html
未だに収束を迎えないコロナ渦ですが、これからも引き続き潰瘍性大腸炎に対する医療費助成が継続され、潰瘍性大腸炎を抱える患者が継続して十分な治療を受けられ安心して社会生活を送られることを期待します。