こんにちわ、管理人(@UCinfo_blog)です。
先日、NHKの健康番組にて、IBDをテーマにした放送回がありました。
見逃した方のために内容を紹介します。
NHK Eテレ 01/19 20:00 チョイス@病気になったとき「急増!潰瘍性大腸炎・クローン病」 #nhketv #チョイス病気になったとき https://t.co/r66s73Rq3R
— NHK Eテレ(教育テレビ) (@NHK_ETV) 2019年1月19日
今回は最終・パート3です。
内容はクローン病の概要とIBD全般のまとめです。
パート1&2は下記のページからどうぞ。
- 【パート1】潰瘍性大腸炎ってどんな病気?
- 【パート2】潰瘍性大腸炎・重症例の治療の選択肢とは?
番組情報
- 番組:『チョイス@病気になったとき』
- 放送タイトル:「急増!潰瘍性大腸炎・クローン病」
- 放送局:NHK | Eテレ
- 放送日:
- 2019年1月19日(土)20:00-20:45
- 2019年1月25日(金)12:00-12:45 ※再放送
- 出演(※敬称略)
- 八嶋 智人(進行/俳優)
- 大和田 美帆(進行/女優)
- 出田奈久(チョイスコンシェルジュ/アナウンサー)
- 仲瀬裕志(解説/札幌医科大学医学部消化器内科講座 教授)
- 番組ページ:http://www4.nhk.or.jp/kenko-choice/x/2019-01-19/31/11116/1722217/
大腸の粘膜に炎症が起こる潰瘍性大腸炎は、国の指定難病の一つ。はっきりした原因はわかっていないが免疫の異常が関係していると考えられる。同じように小腸や大腸などに炎症が起こるクローン病も指定難病で、どちらも増加傾向にある。完治することはなかなか難しいが、食事療法、薬物療法などによって、症状が治まった状態を維持できることが多くなってきた。潰瘍性大腸炎とクローン病の治療のチョイスを詳しく紹介する。
番組HPより
番組内容
クローン病ってどんな病気?
あるクローン病患者さんの症例が取り上げられる。
症例
(VTR)
鈴木雄彦さん(34歳)
家族と幸せに暮らしている鈴木さんだが、実は現在も難病と闘い続けている。
発症は13年前、大学3年生のとき。
鈴木さん:講義を受けていたときにお尻に違和感
だんだん痛くなってきた
椅子にも座ってられなくいらい
これはやばい 普通じゃない
異常を感じた鈴木さんはすぐに肛門科を受診。
診断の結果、痔の一種である「痔ろう」であることが分かった。
しかしそれだけでなく別の病気の疑いも告げられた。
鈴木さんは医師のすすめで大学病院の消化器内科で内視鏡検査を受けた。
炎症により小腸の粘膜の表面がボコボコと盛り上がっていた。
診断名は消化管の難病である「クローン病」
【解説】クローン病について
仲瀬裕志さん(札幌医科大学医学部消化器内科講座 教授)
潰瘍性大腸炎で炎症が起こるのは粘膜
クローン病で炎症が起こるのは粘膜の下
これが大きな違い
症状は急な腹痛、下痢
粘膜の下で炎症が起こるので、潰瘍性大腸炎より潰瘍が深くできる
鈴木さん:難病と診断された時点で今後の人生どうなるのか
仕事ができるのか、ずっと闘病生活になるのか
すごく重い病気だと考えた
当時大学3年生だった鈴木さん。
公務員になるための勉強に励んでいたが夢を断念せざるを得なかった。
入院してまず受けたのが「栄養療法」
絶食し、毎日を高タンパク・高カロリーの栄養剤だけで過ごす治療である。
炎症を起こしている小腸を休ませるため、栄養療法を2ヶ月間続けた。
鈴木さん:すごくつらかった
食べていたものが食べられない
食べたくてしかたがなかった
栄養療法を終えると薬での治療を開始。
まず使われたのは炎症を5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤。
1ヶ月後には症状が治まり、退院することができた。
しかし、退院して2日後に高熱(43℃以上)が出た。
原因は薬のアレルギーによるすい炎。
再入院し、すい炎は1ヶ月で完治したが、クローン病の治療は使う薬を見直すことになった。
鈴木さんの場合、5-ASA製剤に替えて、抗TNF-α抗体製剤を使用した。
免疫細胞が作り出し炎症を強めるタンパク質TNF-αの働きと、免疫細胞自体を抑える強力な治療薬
鈴木さん:食べてすぐ下痢をしたり、おなかが痛くなることがなかった
「俺 食べられる 病気が治った」と思うほど改善した
8週間に一度、点滴を欠かさず受けることで13年間症状を抑えることに成功している。
そして、もう一つの鈴木さんのチョイスとは…?
9年前に出逢った妻・舞弓さんは管理栄養士。
クローン病では油物や香辛料など刺激の強い食事は制限される。
そこで舞弓さんは鈴木さんの食事のケアに尽力してきた。
鈴木さん:感謝しております
公務員は諦めた鈴木さんだが、今では家業の造園業を継いでいる。
鈴木さん:大学でほかのことを学んでいたので家業を継ぐ意思はなかったが、やってて楽しい。
病気になってよかったわけではないが、よかったと感じる。
(VTRおわり)
クローン病の特徴
八嶋:クローン病の症状は潰瘍性大腸炎によく似ているところもあるけど、どういうところが似ててどういうところが違う?
- 消化管のどこにでも炎症が起こる
- 腸粘膜の深い箇所で炎症が起こる
- 肛門病変がよくみられる
消化管のどこにでも炎症が起こる
大和田:みんなが小腸に病変ができるわけではない?
仲瀬Dr:主に3つのパターン(病型)。
クローン病で炎症が起きるのは
主に小腸のみ、大腸のみ、小腸と大腸
八嶋:潰瘍性大腸炎の場合は直腸からだが、クローン病はどこから発生するか分からない?
仲瀬Dr:クローン病の場合、消化管のどこに炎症が起こるかは分からない。
経過でいろいろなところにでることもある。
腸粘膜の深い箇所で炎症が起こる
仲瀬Dr:粘膜の下にあるのは血管とリンパ管
仲瀬Dr:粘膜の下の血管に炎症が起こって血流が悪くなるので、血管に沿って潰瘍ができる
血管に炎症が起きると血流が悪くなり深い潰瘍ができやすくなる
仲瀬Dr:凸凹している
リンパ管に炎症が起きるとリンパ液の流れが悪くなり盛り上がる
仲瀬Dr:粘膜の深いところで炎症が起こっていることが2つの内視鏡画像から分かる。
肛門病変がよくみられる
仲瀬Dr:肛門のところは、腸の粘膜の下に筋肉を含んだ組織がある。
そこにどんどん潰瘍が出来ていき、トンネル化して痔ろうになる。
これはクローン病の特徴だが、潰瘍性大腸炎の場合は粘膜で炎症が起こるので深い潰瘍にならず痔ろうは起こりにくい。
若くて痔ろうの人は消化管の検査を!
クローン病の食事
大和田:VTRの鈴木さんは奥さんにサポートして貰っていたが、食事について気をつけることは?
仲瀬Dr:小腸はほとんど栄養の成分を吸収する部位。
クローン病の人の8割ほどは小腸に炎症がある。
我々も(誰でも)ものを食べると小腸に負担がかかって炎症が起こっている。
しかし、自然に炎症を抑えてくれるシステムが備わっている。
クローン病の人で小腸に炎症があるときに、刺激物をたくさん入れてしまうと炎症をされに引き起こしてしまう。
炎症があるときは
肉の脂身、油物、アルコール、刺激物などを控える
IBDにおいて心がけること
八嶋:潰瘍性大腸炎、クローン病ともに難病ということで「治らない」ということにショックを受けるかもしれないが、日頃から心がけること、気をつけることは?
仲瀬Dr:
腸内細菌のバランスを整えることが大事
八嶋:腸内細菌のバランスを整えるために具体的になにをすればいいか?
仲瀬Dr:
- ストレスを避ける
- 十分な睡眠
- 適度な運動
- 食物繊維の摂取:善玉菌を育てる
八嶋:本日の内容を踏まえて「ベストチョイス」のためのアドバイスを。
仲瀬Dr:いろいろな薬を紹介したが、いろんな新薬が開発されてくる。
それはこの病気が何であるかが分かってきたから、それに基づいていろんな薬が作られてきた。
患者にあった薬がチョイスできる時代が来た。
我々、臨床医は患者さんの笑顔が見たい。
本当にニコニコしている顔が見たくて医者をやっているので、そういった治療ができるように研究を続ける。
患者さんにも期待してほしいと思う。
患者それぞれが自分に合った薬をチョイスできる時代が来た!
エンディング
大和田:もちろん罹っている人たちは大変でしょうし、一生付き合っていかなければいけない病気だとしても、選択肢がたくさん広がっているというのはとてもいいことだなと思った。
八嶋:なんとなく難病という響きは重いが、たくさんのチョイスが増えてきとということを知って、いろんな状況としてはよくなっているとことがよく分かった。
所感:全編を振り返って
まずは、(指定難病の中では患者数が多いほうですが)一般に希少である「難病」とされているIBDのふたつの疾病がマスメディアに取り上げられたことは、一般認知を広める上ではありがたいことだと感じます。
情報というのは、届けるべき対象で粒度を変えるべきなので、いくらか不足した情報があったにせよ限られた時間で〈一般の人〉に伝わるよう噛み砕かれた番組だと思います。
〈患者の方〉への補足情報としては、そふぁー(@microbi0723sof )さんのnoteを紹介しておきます。
とはいえ、今回の放送において患者でありながら知っているようで知らない内容も多々ありました。
例えば、潰瘍性大腸炎とクローン病は、大腸と小腸(を含む消化管全体)という病変の部位の違いという単純な理解にとどまっており、
- 潰瘍性大腸炎で炎症が起こるのは粘膜
- クローン病で炎症が起こるのは粘膜の下
という本質的な違いは今回知りました。
妊娠中の服薬の方針のトピックは、先入観に捕らわれず、正しい知識を持つことの重要性がよくわかるものでした。
そして、薬の進化と選択肢が広がることは大変ありがたいことです。
近年続々と承認されている新薬がそれぞれ「JAK阻害薬」、「抗インテグリン抗体製剤」など、どのカテゴリに属する薬なのかを捉えることで理解が捗ります。
また、薬の発展の一方で病歴が長くなるほど、最後に紹介されていた基本的な健康にいい生活が出来ているかどうかが病状に対する影響度が大きいことを実感します。
- ストレスを避ける
- 十分な睡眠
- 適度な運動
- 食物繊維の摂取(※活動期や狭窄例除く)
解説をされていた札幌医大の仲瀬先生のことはタクロリムスの記事などを予てから拝見しており知っていました。
「患者さんにも期待してほしいと思う。」
というお言葉があったので、研究が進展し実質的な「完治」の状態になる未来を期待して過ごしたいと思います。
〈おわり〉