こんにちわ。
今日は、口腔ケアの重要性についてです。
IBD(潰瘍性大腸炎、クローン病)は腸の疾患ですが、歯周病などによる口腔内の細菌バランスの崩れがIBDを含めた様々な病気のリスク上昇になるという報告があります。
いくつかの記事を紹介します。
歯周病は全身に悪影響を及ぼす
まずは、日本歯科医師会主催の第24回口腔保健シンポジウム(2018年8月4日開催)での、山崎和久氏の特別講演より、内容を抜粋して紹介します。
特別講演:歯周病学、口腔生命科学に関する講演 ~歯科の立場から~
山崎和久氏(新潟大学大学院 医歯学総合研究科 口腔保健学分野教授)
出典:[第24回口腔保健シンポジウム](2)歯周炎 全身に悪影響 | yomiDr.
細菌叢(さいきんそう)とは
- 私たちの口の中、皮膚、腸の中などには体を構成する細胞の数を上回る数の細菌が生息している
- その種類も数百~数千種類に及ぶとされ、多様な細菌集団を細菌叢(さいきんそう)という
- 一番多く生息しているのは腸、次に多いのが口の中で、それぞれ腸内細菌叢、 口腔細菌叢と呼ぶ
口腔細菌叢について
- 口腔細菌は口の健康に大切で、バランスが崩れると虫歯や歯周病になる
- 歯磨きを怠ると、歯の表面や歯と歯肉の境目に細菌がたまってプラーク( 歯垢)ができ、歯肉炎になる
- さらに歯肉炎を放置すると、歯と歯肉の間に歯周ポケットという溝ができ、溝の中に細菌が増え歯石となり、最終的に歯を支えている骨や歯周組織全体が壊れて歯周炎になる
腸内細菌叢について
- 腸内細菌は、①病原菌の侵入を阻止する、②消化酵素で分解できない食べ物を分解してエネルギーにする、③免疫機能の発達や様々なホルモンの産生などに関わる、といった働きをする
- 腸内細菌叢のバランスの崩壊は色々な病気と関連することが知られている
歯周病の全身への影響
- 最近、口の中の病気である歯周病が腸に影響を及ぼして全身にも悪影響を与えることもわかってきた
- 歯周病は口の中だけにとどまらず、糖尿病を悪化させることがわかっている
- それ以外にも脳卒中や心疾患、炎症性腸疾患、関節リウマチ、がん、早産・低体重児出産と様々な病気のリスクを上げることもわかってきている
- 歯周炎になると歯周ポケットの内側は潰瘍状態で出血しやすく、細菌が体の中に侵入しやすくなる
- 侵入した細菌や細菌が作った病原物質、炎症を起こす物質が、血流に乗って様々な組織に届き、全身の炎症の状態を悪化させたり、糖や脂質の代謝に悪い影響を与えたりすることが考えられる
- 歯周病が関連している病気と、腸内細菌のバランスが崩れてリスクが高くなる病気の多くが共通している
- 歯周病の患者は、1種類の歯周病菌だけでも1日に唾液とともに約100億個をのみ込んでいる計算になり、食後の胃酸の酸性度は高くないため、のみ込んだ菌のかなりの量は生きたまま腸まで届いていることがわかった
- 腸まで届いた歯周病菌によって腸内細菌の構成が崩れ、悪玉菌が増え、それらが作る毒素や悪い代謝物が増えることにより、腸のバリア機能が低下し、内臓に障害を与え、代謝性の疾患や自己免疫疾患などのリスクを上げるのではないかといわれている
腸内細菌叢(腸内フローラ)は昨今話題のワードですので、IBDの皆さんも注目されている方は多いと思いますが、腸内の健康を含めた全身の健康のためにも、実は口腔内の健康が非常に大切だと言えます。
口の中にいる細菌が腸の中で増えるとIBDの可能性(慶応大)
もう一つ、記事を紹介します。
こちらも、口内に存在する細菌が腸内で増えるとIBD発症のリスクになるという研究結果です。
- 普段、口の中にいる細菌が腸の中で増えると、腸に慢性の炎症が起きる潰瘍性大腸炎やクローン病といった難病の原因となる可能性があると、慶応大などのチームが米科学誌サイエンスに発表した。
- チームの本田賢也・慶応大教授は「口の中を清潔にすれば、腸の難病の治療や予防につながるかもしれない」と話している。
- チームは、クローン病患者の唾液を、無菌状態で育てたマウスの口に入れると、腸内で炎症を引き起こす免疫の細胞が増える例があることを発見した。
- マウスのふんの細菌を詳しく調べると、普通は口の中にいて腸にはいない「肺炎桿菌(かんきん)」という細菌が腸で増えたのが原因だと分かった。
- 通常のマウスでも、抗生物質で腸の細菌を弱らせた後に肺炎桿菌を入れると増えやすいことが判明した。
- 肺炎桿菌は健康な人の口にもおり、高齢者や免疫の働きが落ちている人では肺炎の原因となる。炎症を起こしやすい体質の人では、腸で増えると難病の発症につながる恐れがあるという。
毎日新聞 2017年11月15日 東京朝刊 | 口の細菌が原因?慶応大などチーム
入院前の口腔ケアの大切さ
最後に、入院前の口腔ケアの重要性についてです。
入院される病院の入院案内冊子には多くの場合、口腔ケアについて言及されていると思います。
「消化器疾患でなぜ口腔ケア?」と思われるかもしれませんが、下記のような理由により、入院前の口腔ケアの必要性が啓蒙されています。
術後の合併症を予防
口内細菌が肺に入って炎症をおこす誤嚥性肺炎や歯周病の悪化などの合併症のリスク軽減のため
感染症のリスクを軽減
放射線療法や化学療法(抗がん剤、生物学的製剤)による免疫低下でおこる口内炎や口内の乾燥などの副作用を軽減するため
IBD患者は入退院を繰り返す場合が多いです。また、免疫を抑制する治療を用いる場合が多いため、特にこの点を意識しておきましょう。
また、入院前に急に虫歯を治すといっても1回の治療で完了しない場合もあります。普段からの口腔ケアに努めることが大切です。
参考👉 他の先進諸国と比較して歯のメンテナンスの受診率が著しく低い日本 | ライオンインプラントセンター
今日は仕事後、歯のクリーニングへ。入院のしおりなどに入院前の口腔ケアについて言及されているのを見たことがあると思いますが、理由を知ってますか?IBDは入院の頻度も多いので普段から口腔ケアを心がけましょう。https://t.co/vgCHw2IXgs
— 潰瘍性大腸炎になったら読むブログ (@UCinfo_blog) August 17, 2018
おすすめは、3ヶ月に一度程度の定期検診とクリーニングに通うことです。保険適用で2,000~3,000円ほどです。
以上です。口内も腸もご健康に^^
[…] https://kaiyouseidaichouen.com/importance-oralcare […]