【更新】令和3年度医療費助成申請 都道府県リンク(2021.06.08)

一般名と商品名とは?薬の名前について

こんにちは。

今日はお薬編です。第一弾は薬の名前についてです。

この記事を書こうとした目的は、過去、薬について一般名や商品名の知識がなかったときに主治医の話を聞く際に多少戸惑いを覚えることがあったからです。そこで学んだ知識をここらできちんとまとめてみようと思いたちました。

例えば、潰瘍性大腸炎の薬『アサコール』。みなさん、5-ASA製剤、メサラジン、アサコールの違いが説明できますか?

薬のいろいろな名称

医薬品の呼称は概ね下記の種類があるとされています。ひとつずつみてみましょう。

  • 一般名
  • 化学名
  • 商品名

一般名

国際一般名(INN)

International Nonproprietary Name (INN;国際一般名) は、世界共通の医薬品の固有名称で、WHO医薬品国際一般名称委員会が命名します。英語・ラテン語・フランス語・ロシア語・スペイン語・アラビア語・中国語で発行されています。

後述するように、日本を含め、自国で一般名を命名している場合も多いです(米国:USAN、英国:BANなど)。

医薬品一般的名称(JAN)

日本では、厚生労働省の医薬品名称調査会が定めた日本医薬品一般的名称 (Japanese Accepted Names for Pharmaceuticals, JAN) が用いられます。和名と洋名がつけられます。

INNとJANは一部異なるが、両者の調和が取り組まれているそうです。

 

●JAN検索

日本医薬品一般名称データベース | 国立医薬品食品衛生研究所

 

化学名

化学名は、薬効成分に対しての呼称です。薬効成分(薬用成分)とは、厚生労働省によってその効果が認められ認可された成分です。有効成分と捉えてもいいでしょう。

IUPAC名

国際純正・応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry、IUPAC)が定める化学物命名法に基づく名称で化学界における国際的標準となっています。

非常に長い名前であることが多く、一般的な使用には適さないことから、INNが策定されたという背景があります。

商品名

商品名は、医薬品の製品(商品)としての名前です。商標として登録されることから権利者と、権利者から使用を許可された者以外は使用でません。。命名上の規則性は特にありませんが、商品名を登録する製薬企業は、①その薬剤の特徴を表現できる、②覚えやすい、③その薬への期待を反映するなど、様々な工夫を凝らして名称が付けられています。

① 薬効を表現する商品名

デパス ▶ depression(うつ)をpass(パス)する

プロプレス ▶ blood pressure(血圧)をblock(ブロック)する

ベシケア ▶ vesica(勝胱)をcare(保護)する

② 作用機序を表現する商品名

ベタニス ▶ beta 3 agonist(アドレナリンβ3受容体作動薬)

スーグラ ▶ 作用機序であるSGLT2阻害のS・G・L・TからSuglat

③ 薬効と作用機序を表現する商品名

アリセプト ▶ AriはAlzheimerから、ceptはアセチルコリンreceptor(受容体)から、合わせてAricept

④ その他・その他の組み合わせ

クラビット ▶「crave(切望する)it」。つまり、「待ち望まれた薬」

フォシーガ ▶ 患者の「ため」(For)と、Inhibit Glucose Absorptionの頭文字「iga」を掛け(x、エックス)合わせてForxiga

ネシーナ ▶ 全く新しい作用機序を有する期待の経口糖尿病薬であることから、New scienceが由来

(出典:NIKKEI Drug Information 2014.12)

使用例(INN, JAN, IUPAC, 商品名)

説明した一般名・化学名・商品名について例をあげてみましょう。

アセトアミノフェン(広く用いられる解熱鎮痛薬)

この場合、INNとJANは異なります。

アサコール

冒頭の質問の解答になります。

おわかりのように『アサコール®』はゼリア新薬工業が製造販売している薬の商品名です。

一般名はメサラジンとなります。

アサコール」も「ペンタサ」も「リアルダ」も、すべて有効成分がメサラジンの薬です。

加えて、メサラジンのIUPAC名はシンプルなので、一般名のような扱いで5-ASA製剤とも呼ばれますね。5-ASAとは、5-アミノサリチル酸(5-Aminosalicylic Acid)のことです。IUPAC名の“2-hydorxybenzoic acid”の部分が2-ヒドロキシ安息香酸、別名・サリチル酸となります。

先程もいいましたが、一般にIUPAC名は長ったらしく複雑なので、普通は私たち患者が特に把握する必要はありません。(※例えば、イムラン®(一般名:アザチオプリン)のIUPAC名は6-[(1-Methyl-4-nitro-1H-imidazol-5-yl)sulfanyl]-7H-purine です。暗号みたいですね。)

 

潰瘍性大腸炎治療に用いられる薬の一般名&商品名の対応

さて、いろいろ説明してきましたが、結局ここを把握しておけば大丈夫です

僕が冒頭に少し戸惑ったと記したのは、医者から一般名で説明される場合と商品名で説明される場合があったためですが、何回も見聞きしていたら勝手に覚えてしまいますのでご心配なく。

<潰瘍性大腸炎治療薬  商品名と一般名の対応表>

剤形が複数ある場合は括弧()内で記載

一般名処方

医薬品を処方する時に一般名を用いることで、患者が先発医薬品と後発医薬品とでの選択肢を得ることができます。医薬品に含まれる一般名を英語でジェネリックネーム(generic name)と言います。後発医薬品のことをジェネリック医薬品と呼ぶのはこのためです。

ジェネリック医薬品(後発医薬品)は、先発医薬品(新薬)の特許が切れた後に販売される、先発医薬品と同じ有効成分の医療用医薬品で、新薬のような高額な研究開発費や特許登録費が必要ないことから、価格はより安くなります。

ただし、潰瘍性大腸炎の場合は、同じメサラジン製剤でも、ペンタサとアサコールではドラッグデリバリーシステム(※)が異なります。そのため、「メサラジン錠」といえばペンタサ錠の後発品、「メサラジン腸溶錠」といえばアサコール錠の後発品となります。

(※)ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System, DDS)とは、体内の薬物分布を量的・空間的・時間的に制御し、コントロールする薬物伝達システムのことで、届けたい場所に有効成分を届ける技術と言えます。潰瘍性大腸炎の場合、具体的には、有効成分を大腸に届けることが重要となります。

 


日本の潰瘍性大腸炎治療にはさまざまな薬の選択肢があります。

これはとてもありがたいことですが、患者側でも薬について学ぶことが必要だと僕は考えます。その際に、この記事がお役に立てれば幸いです。

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